RSウイルス感染症
乳児(生後4週~1歳未満)・幼児(1歳~6歳頃)に初感染した場合の症状が重くなる感染症です。特に生後6か月未満の乳児では重症な呼吸器症状を生じ、入院が必要となる場合があります。大人が感染しても軽い症状ですむことが多いです。何度もかかることがありますが、再感染した場合は症状が軽くすむことが多いです。
迅速検査が可能で、15分で結果がでます。潜伏期間は4~6日間で、登園・登校の目安は呼吸器症状が軽快することです。RSウイルスに治療法はなく、症状にあわせた対症療法になります。
溶連菌感染症
溶連菌は、のどに感染して咽頭炎や扁桃炎を生じ、高熱(38〜39℃)がみられます。しかし3歳未満では発熱がみられにくいと言われています。そのほか頭痛、首のリンパ節の腫れ、腹痛や嘔吐などの腹部症状もみられることがあります。風邪と違って咳や鼻水が出ないのも溶連菌の特徴です。
迅速検査が可能で、15分で結果がでます。潜伏期間は2〜5日で、登園・登校の目安は解熱して24時間経過することです。溶連菌は抗生剤が効きやすいので、治療をするとすぐに症状は良くなります。しかし、急性糸球体腎炎やリウマチ熱といった合併症を起こすことがあります。少なくともペニシリン系抗生剤なら10日間、セフェム系抗生剤なら7日間内服することが必要です。
新型コロナ感染症
5類感染症扱いになりましたが、現在も新型コロナ感染症は非常に多いです。大人だけでなく全ての年齢の子供にも感染する可能性があります。発熱、咽頭痛、咳といった典型的な症状だけでなく、無症状か軽度の症状で済んでいる子も多く、胃腸症状(嘔吐、下痢、腹痛)のみで起こることもあります。
迅速検査が可能で、15分で結果がでます。潜伏期間は2~7日で、登園・登校の目安は解熱して24時間経過かつ発熱してから5日間経過することです。治療にウイルスの増殖を抑える内服薬がありますが、重症化リスクが高い(心疾患、呼吸器疾患)子供に処方できるラゲブリオ、パキロビッドバックと、重症化リスクが高くなくても処方できるゾコーバという内服薬があります。ただしゾコーバは有効性が乏しいため、当院では処方を行っておりません。5類感染症として対症療法で治療を行っております。
インフルエンザウイルス感染症
インフルエンザウイルスには、A型とB型があります。初期はA型に感染することが多いです。いちどインフルエンザにかかっても、終生免疫はないので何度でも感染します。一般的に症状は、高熱、咽頭痛、鼻水、咳、全身症状(倦怠感、関節痛)といった強い症状がみられます。また下痢、嘔吐、腹痛などの消化器症状がみられることも多いです。症状は約1週間で治りますが、合併症を起こしやすく肺炎や気管支炎を引き起こすこともあります。インフルエンザの予防接種の効果は高くありませんが、重症化を予防することが期待できるため、接種することをおすすめします。生後6か月以上で接種可能となりますが、まずはご相談させていただきます。
13歳未満では2回接種が推奨されています。1回目と2回目の2~4週間の間隔が必要です。またワクチンの十分な効果が得られるのは2回目を接種してから2週間以上経過してからです。したがって11月すぐに1回目の接種を受けた方が良いです。
迅速検査が可能で、15分で結果がでます。潜伏期間は1~3日で、登園・登校の目安は解熱して48時間経過かつ発熱してから5日間経過することです。治療には、インフルエンザウイルス増殖を抑制するオセルタミビルがあります。ただ増殖を抑制することを目的としているため、発熱してから48時間以内に内服する必要があります。
百日咳、マイコプラズマ肺炎
百日咳とマイコプラズマ肺炎は子供でもかかることが多い慢性咳嗽の原因です。周囲にも感染しやすく、長い咳が続く子供が周囲に多いとき、百日咳やマイコプラズマ肺炎が疑われます。子供の百日咳は、非常に強い咳(コンコンコンコン)がみられます。診断はその特徴的な咳と血液検査(発症から1か月以内なら血液検査でIgM抗体かIgA抗体のいずれかが陽性)でされます。治療は初期なら抗生剤が有効ですが、長引く咳にはなかなか有効な薬がありません。百日咳にはワクチンがあります。ワクチン接種された方はほぼ発症しません。そのため発症する場合は、ワクチンの効果が弱くなってきた成人(効果は10年程度)もしくはワクチン接種をていない子供が感染しやすくなります。
マイコプラズマ肺炎は毎年流行しています。発熱、咽頭痛、咳と風邪と似た症状がでます。ただ咳は乾いた咳が2週間以上も続きます。咳の割に本人は元気で重症感がないのが特徴です。診断はレントゲンで両側下肺に肺炎像を確認した上で、血液検査で診断をおこないます、しかし血液検査は初期には診断できない例が多く、2~3週間経過して治りかけの時期に血液検査でマイコプラズマと診断されます。マイコプラズマ肺炎と診断するには何度も血液検査を繰り返すしかないのが悩ましいです。治療は抗生剤になりますが、自然治癒も多くみられます。しかし周囲に感染させてしまうため、疑えば早めの治療が必要になります。
ウイルス性胃腸炎
ウイルス性胃腸炎は「おなかのかぜ」と言われ、ロタウイルス・アデノウイルス・ノロウイルスが有名です。突然の嘔吐で始まり、半日程度に何回も嘔吐を繰り返すか、1日1~2回と嘔吐は少ないですが3日ほど続くパターンがあります。嘔吐後に下痢になることも多く、下痢は3日~1週間ほど続きます。ロタウイルスは酸っぱい臭いのクリーム色~白色をした下痢が見られ、だんだん水溶性下痢になります。発熱はあまり見られませんが、たまに高熱を伴うことがあります。ノロウイルスは半日で頻回な下痢がみられることが多いです。
ウイルス性胃腸炎の治療に特別な治療はありません。治療の中心は、脱水を防ぐため、こまめな水分補給(経口補水液OS-1)、安静、整腸剤内服といった対症療法になります。こまめな水分補給で嘔吐する場合は、吐き気止めの坐薬を使います。坐薬を使用して30分~1時間は飲まず、その後こまめな水分補給をしてください。水分補給ができれば、次にお粥、うどんなどの穀類から食事を始められます。
原因を特定するウイルスの検査は必要ありません。原因がどのウイルスであっても、治療薬がないため対症療法しかできないからです。