認知症
いろいろな原因で脳細胞が無くなったり、働きが悪くなったりするため、さまざまな障害が起こり生活をするうえで支障が出ている状態(6ヵ月以上継続)を指します。主に薬やお金の管理ができなくなったり、整理整頓ができなくなったりすると病的な状態を疑います。
原因でもっとも多いのは、アルツハイマー病です。アルツハイマー病は、もの忘れなどの記憶障害で気づかれることが多いですが、65歳以下の方は、もの忘れ以外の症状が目立つことも少なくありません。脳にアミロイドβやリン酸化タウと呼ばれるタンパク質がたまり、脳神経を障害し結果的に脳が萎縮します。このアミロイドβを取り除く治療薬の開発が進んできています。2023年12月から保険承認されたレカネマブ(レケンビⓇ点滴静注)もそのひとつです。
認知症で大切なことは、介護する家族の存在です。認知症の方を介護することは、言葉では言えないほど大変なことです。当院では家族のサポートとして介護申請といった福祉サービスを進めるなど包括的にみていきます。
また認知症が進行すると周辺症状(BPSD)といった様々な症状がみられます。BPSDで問題になるのが、陽性症状である徘徊や暴言暴力、陰性症状である閉じこもりや医療介護拒否です。BPSDがみられるようになると介護する方の負担がさらに大きくなります。認知症に対する内服治療は、認知症の進行を抑制するだけでなく、BPSDに合わせた内服投与で精神的に落ち着くことも目的とします。
よくある質問:介護がとても大変で、イライラしてしまいます。
たいへん難しいことですが介護する方は、「否定しない」「怒らない」「感謝する」といった心がけが必要になります。言うのは簡単ですが、実践することはとても難しいです。むしろ介護される方よりも、介護する方の心と体に余裕がもてるようサポートをする方がずっと大切だと実感しています。
脳卒中(脳血管障害)
脳の血管が破れる脳出血と、脳の血管が詰まる脳梗塞にわかれます。喫煙や生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症)が原因となり、脳血管の動脈硬化が進行し、脳の血管に障害をきたします。
脳卒中の症状は突然・片方に現れることが多く、治療は1分1秒を争います。突然・片方の症状がみられたら、すぐに救急車を呼んで検査を受ける必要があります。しかし頭痛、めまい、舌のもつれなど左右差がわからない症状もあるため、その場合は受診して医師に判断していただく必要があります。
脳梗塞を発症して直ぐの治療には、血栓を溶かす治療薬であるrt-PA点滴治療、カテーテルを用いた血栓除去治療が普及しており、これによって脳梗塞が良くなる可能性が高くなっています。しかしこの治療は症状がみられてから早期に行わないと効果がありません。点滴治療で4時間半以内、カテーテル治療で6時間以内とされていますが、治療できる時間を拡大する努力がなされています。
原因は、たばこ、生活習慣病(高血圧症、糖尿病、脂質異常症)などです。また飲酒も脳梗塞、脳出血、くも膜下出血のリスクを高くすることがわかっています。心房細動という不整脈がある方は、心臓の中に血液の固まりができやすく、それが脳に飛んで脳梗塞を起こすことがあります。心房細動がある人は脳梗塞になる確率が2~7倍ほど高くなりますので、予防治療(血をサラサラにする)が必要になります。自分で脈を触れて不規則な脈がある場合は、医療機関に相談してください。
予防につながる食べ物としては、野菜や果物、大豆製品があります。運動はウォーキングなどの軽い有酸素運動で血流をよくすることも効果的です。そして、生活習慣病を早期発見するために、年に一度は必ず健診を受けましょう。生活習慣病があれば、保健指導や治療を受けて健康管理を続けてください。
よくある質問:どのようなときに脳卒中を疑いますか?
わかりにくい症状がありますので、今までなかった症状が突然に出現したら可能性は否定できません。キーワードは、突然+片方の症状です。このときは脳卒中の可能性が高いのです。すぐに救急車を呼んで病院を受診しましょう。脳出血だと頭痛を伴うことが多いです。これも今まで経験したことのない頭痛が突然出現したら、すぐに救急車を呼んで病院を受診してください。
頭痛
非常に多くの人が慢性的に頭痛をもっていますが、病院を受診することは少なく、仕方がないものとして日常生活を送られている方が多いです。頭部画像検査で異常がみられない慢性の頭痛では、筋緊張型頭痛、片頭痛、三叉神経痛、群発頭痛があります。
筋緊張型頭痛は、肩こり、ストレスなどによる頭痛で、原因としては最も多いです。鎮痛薬が効きにくいため鎮痛薬乱用による薬剤性頭痛の原因にもなります。肩こり・ストレスを改善させることは難しいですが、治療として筋弛緩薬・抗不安薬を使用しつつ、効果のある鎮痛薬を選択していくことが多いです。
片頭痛は、ズキズキとした片側性の拍動性疼痛で起こることが多く、安静にしてないとつらいため日常生活に大きな影響を及ぼします。閃輝暗点・音過敏・匂い過敏などの前兆をともないます。家族歴がある方が多く、天気・気温など季節性に悪化しやすいのも特徴です。治療に、片頭痛予防薬(ミグシスなどの血管収縮薬など)を使用しますが、効果が乏しい場合でも抗CGRP関連製剤の注射が有効になることが多く、治療の選択肢が増えています。頭痛時には当院は片頭痛の治療薬であるトリプタン製剤に漢方薬を併用してみております。治療により頭痛を0にして、日常生活に影響を与えないことを目標にしています。
よくある質問:抗CGRP関連製剤とはどのようなものですか?
片頭痛の方は、血中CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)が上昇し、それが痛みの原因になっていると言われております。抗CGRP関連製剤はその痛みの原因を抑えるため、いままで難治性であった方にも大きいな効果がみられております。抗CGRP関連製剤にはエムガルティ、アジョビ、アイモビーグという製品があり、いずれも4週間に1回の皮下注射になります(エムガルディのみ初回2回注射)。保険適用3割負担で、12,000~13,000円台になります。