生活習慣病(高血圧症、糖尿病、脂質異常症)

高血圧症

日本高血圧学会の診断基準は、診察室の収縮期血圧(最大血圧)が140mmHg以上、または拡張期血圧(最小血圧)が90mmHg以上を高血圧としています。自宅で測る家庭血圧の場合は、収縮期血圧が130mmHg以上、または拡張期血圧80mmHg以上を高血圧としています。そのため、自宅で測って記録する血圧ノートが大切になります。

高血圧には本態性高血圧と二次性高血圧があります。二次性高血圧には、ホルモンの異常や睡眠時無呼吸症候群があります。当院では血液ホルモン検査、睡眠時無呼吸症候群の検査で二次性高血圧がないかどうかを調べます。それらの原因が無ければ本態性高血圧と診断されます。

本態性高血圧は、食塩の過剰摂取、食事内容(飽和脂肪酸である肉や乳製品の摂りすぎ)、肥満、飲酒、運動不足、ストレス、遺伝的体質などが組み合わさって起こります。生活習慣の改善を指導させていただき、降圧薬による血圧管理を行ってまいりますが、降圧薬の調整は患者さまと相談しながら決めていきます。

よくある質問:高血圧は治療しないといけないのですか?

高血圧は、日本人の生活習慣病の死亡に最も関係しています。もし高血圧が完全に予防できれば、年間10万人以上の人が亡くならずにすむと推計されています。そのため高血圧の治療をすることは、血管の病気を予防する意味でもとても大切です。


糖尿病

膵臓が出すインスリンというホルモンの作用不足により、高血糖が慢性的に続く病気です。糖尿病の診断は空腹時血糖値、HbA1c、75gOGTT(75g経口ブドウ糖負荷試験)によって行われます。

糖尿病は1型と2型に分かれますが、免疫異常が原因である1型は少なく、多くは遺伝的要因に過食や運動不足などの生活習慣が重なった2型です。可能性のある人も含めると日本人の6人に1人が2型糖尿病といわれており、推計1870万人にもなります。

糖尿病の恐ろしいところは、症状のないままに重篤な合併症が進行することです。眼の網膜症・腎障害・下肢の神経障害という3大合併症のほか、大きな血管の動脈硬化が進行して心臓病や脳卒中のリスクが高まるところです。生活習慣の改善によって糖尿病を発症する手前で防ぐことが大切ですが、たとえ発症してもあきらめずに血糖値を良好にコントロールが大切です。

よくある質問:なかなか糖尿病の数値がよくなりません。

最近は、GLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害薬など新しい薬がでてきています。新しい薬は、空腹時には作用せず低血糖を起こす心配も少なくなっています。また食欲中枢の働きかけにより食欲を減退させ、体重減少作用もみられます。生活習慣の改善も大切ですが、新しい薬を使うことにより血糖値を安定させることが出来やすくなっています。


脂質異常症

血液中の脂質が上昇している状態です。LDL(悪玉)コレステロールとTG(中性脂肪:トリグリセライド)は高いことが問題になります。HDL(善玉)コレステロールは低いことが問題になります。これらはいずれも、動脈硬化の促進と関連します。

LDLコレステロール上昇の原因として、食事中の飽和脂肪酸の摂りすぎがあげられます。飽和脂肪酸は、肉の脂身・バターやラード・生クリームなどに多く含まれます。またインスタントラーメンなど加工食品にも含まれています。一般的に冷蔵庫の中で固まっている油脂は、飽和脂肪酸の多い油脂であることが多く、サラダ油や魚油のような液体の油は、不飽和脂肪酸の多い油脂であることが多いです。

TG上昇の原因は、摂取カロリー量が多く、特に甘いものや酒・油・糖質の摂りすぎがあげられます。運動や減量を行うことで、中性脂肪を下げることができます。また青魚に多く含まれるn-3系(ω-3系)多価不飽和脂肪酸には、中性脂肪を下げる働きがあります。

HDLコレステロール低下の原因は、肥満、喫煙、運動不足です。運動や減量・禁煙によりHDLコレステロールの上昇が見込まれます。飲酒には、HDLコレステロールを高くする働きがありますが、飲酒は1合からでも高血圧や肝障害を悪化させますので、HDLコレステロールを上昇させるために飲酒はお勧めできません 

よくある質問:コレステロールは下げ過ぎない方がいいのですか?

LDLコレステロールが悪玉と言われるのは、動脈硬化を促進させるためです。しかし、LDLコレステロールは人間の体には必須で、ホルモン・細胞を作る材料になります。低いのは血管には良いですが、身体全体には決して良くないため、どれくらいの数値でみていくのか、ご相談ください。